「芸術家」、「アーティスト」。
私個人にとっては何とも耳触りの良い職業であり、それは自身が運営するゴールド&シルバーアクセサリーブランド(xCROWxNILxTAILxCOCKx for DEVIL Official Website)から生じる売上利益のみでの生活水準の維持が困難な現状においては、未だ悲願としている将来像である。
遡ること2006年春。
この星の支配的な社会構造に毒されながらも心底疑心を抱いていた私であったが、その社会システムの一因を管理する税務署に「個人事業の開業届出書」と「所得税の青色申告承認申請書」を提出し、皮肉にも税務管理の檻の中、しかしながら法に則った潔白な事業形態の下に、晴れて個人事業主という立場で、xCROWxNILxTAILxCOCKxの前身となったシルバーアクセサリーブランド「×黒×鬼×帝×國×」の運営を開始する運びとなった。
それから早十余年の歳月を経た2017年現在、私個人としてはあくまでも一芸術家としての自覚を存在意義の本質として定めた人生を送っているが、傍から見た場合の職業となると、アーティストとは異なるものとなるだろう。
なぜなら、日本社会の通念における実際問題として、主たる収入がアーティストとしてのブランド運営による営業利益ではない時点で、それは本業とは言えないからである。
2017年現在の私は、アーティスト活動の傍らで世俗的な生活水準の維持を目的として、非正規で企業に雇用され、この東京という名の暗き豚小屋の中で肉体労働に励むことによって、必要最低限度の単身生活を営み得る賃金を得ることで自身の生活を賄う生存スタイルを余儀なくされている。
いわゆるダブルワーク、もしくはフリーター寄りのグレーゾーンの中で、完全なるアーティスト化を実現するための道を歩んでいるのだ。
「売れたい。」
アートのみならず自己表現に関わる業種を志す幾多の者達がそう願っていることだろう。
要するにそれは、売れることが「正」であり売れないことが「誤」であるかのような固執したイメージを自然発生的に生じさせるマネー社会への執着の顕在化である。
そして、この「お金が欲しい」という欲求は、自己のクリエーションのオリジナリティーを追求し続けるはずの芸術の本分とはまるで矛盾してしまう危険性をも孕んでいる。
どういうことかと言うと、この金たわしのような金融社会によって洗いざらされた自己保身的な欲求の側面が、我々のアートを臆病にするのである。
今や神々の代理人として流通するマネーに対する強い依存は、マジョリティに承認されたいという欲求へと繋がり得る。
それはやがて、枠組みに捉われたリーズナブルな表現、より多くの顧客、イコール神、イコールお金の需要を満たすために平均化された面白みのない焼き増しの表現を生み出す愚行へと繋がり、最終的には薄利多売の思考へと陥るだろう。
その姿は芸術家などではなく、ただの商業デザイナーである。
例えば、当ブランドにおいてもオーダーメイドでの作品制作を承る場合がある。
ありがたいことではあるものの、先方のご要望に沿った作品を生み出すという業務は商業デザイナーに通じる部分もあり、本来志すべきピュアな自己表現の道とは本質的に異なってしまう。
ならば、芸術家はなぜ自己本位ともとれるアートたるものを生み落とそうとするのか。
それは、現状に対する不満の顕在であると捉えることができる。
少なくとも、私にとってのアートとはそのような反体制的姿勢の下に成り立つある種の使命的な行為であり、ガーデニングを施した脳内の花畑を見せびらかすような健康的なものでは決してない。
その不満を具体化し、例えば政治的な媒体に構築して表現する方法もあるのかもしれない。
しかし、それら疑問符をより抽象的なものに昇華させる行為こそが「芸術」なのであり、その右脳的業績によって他者の鬱屈した心をダイレクトに解放へと導き得るのであれば、私はそのセラピスト的行為にこそ意義を感じる。
では、大前提として私が表現せんとする芸術の理想系とは、いかなる理念の上に成り立つものであるのか。
つまるところそれは、他ならぬ絶対的な価値を持つマテリアル(金及び銀)を土台とし、その内部表現としてのデザイン及び情報を造形として融合させることによって、買い手側に「資産価値を持つマテリアル」と「デザインコンセプトとしての知的財産」という二大巨塔を提供することであるだろう。
当ブランドでは、「神秘的マテリアルと退廃的世界観のケミストリー」というコンセプトを掲げており、いわゆる陰陽の融合及び調和を理想としている。
つまりそれは、創作意欲としての反骨精神を紡ぎ出すためにこの世のネガティブな側面にフォーカスしつつも、そこから生じる陰の世界観に解決策としての陽の世界観を論理的に混ぜ合わせて現実世界へ再び吐き出すという作業工程を経ることによって、作品の完成度を高めていくことを意味する。
そのような理想を、日々のライフスタイルに至るまで常に追求し続けることによって、私は芸術家としての理想的自己像を現実世界に反映させようと日々藻掻き続けているのだと思う。
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著/臣咲貴王
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