「神聖なるプレイリスト」第五回。
今回のプレイリストは、「L’Arc~en~Ciel(ラルクアンシエル)」。
個人的には、今世に生まれてから一番最初に好意を持ったロックバンドである。
鼓膜に浸みこむ甘美な歌声、音楽的空間に囚われないギターセンス、奔放に跳ねるベースライン、中期以降ではシステマティックなドラミングが特徴。
本プレイリストは、夏の終わりに聴きたくなるような郷愁的なナンバーを中心にセレクトした。
では、再生。
- winter fall(アルバム「HEART」(iTunesから入手)収録曲)
- Driver’s High(アルバム「ark」(iTunesから入手)収録曲)
- Perfect Blue(アルバム「ark」収録曲)
- TIME SLIP(アルバム「REAL」(iTunesから入手)収録曲)
- bravery(アルバム「REAL」収録曲)
- the silver shining(アルバム「ray」(iTunesから入手)収録曲)
- STAY AWAY(アルバム「REAL」収録曲)
- a silent letter(アルバム「REAL」収録曲)
- What is love(アルバム「ark」収録曲)
- Dearest Love(アルバム「True」(iTunesから入手)収録曲)
トゥルー [ L’Arc-en-Ciel ]
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以下解説。
一曲目「winter fall」。
一見、明らかなウィンターソング。
夏がテーマだと言っておきながら、”冬の冷たさ”や”雪原の大地”などという歌詞を見ると、いきなり場違いな印象を受けとるかもしれないが、曲の濁りのない疾走感に夏の開放的なイメージが反映されているように思える。
“そびえたつ空”にすら微動だにしない巨大な”太陽”に対して、”新しい季節”や様々な”過ち”の中を”さまよい続ける”自分を、”雪の結晶”(太陽)に対するちっぽけな”ガラス細工”に例えて、その弱さを嘆いている。
晴れた夏の日に、冷房の効いた車を走らせながらカーオーディオで聴きたい一曲。
二曲目「Driver’s High」。
走り去るエンジン音のフェードアウトからギターイントロが始まり、普通自動車免許を所持していない私ですらハンドルを握りたくなるドライブナンバー。
前曲「winter fall」に登場する”知らん顔でもえる太陽”が、“熱くなった銀のメタリックハート”に共鳴する。
明るい曲調ではあるが、”鋼の翼”で”この世の果てまでぶっ飛ばして心中”するという刹那的な表現や、”真暗な朝が来る”、”来世でまた会おう”など、現実世界に対する閉塞感が表されており、偉大な力に対して捨て身で臨むような終末観が感じられる。
三曲目「Perfect Blue」。
ハワイアンテイストの効いたミディアムナンバー。
“赤信号を猛スピードで走り抜けてくサンデー・ドライヴァー”という表現を、他者の利己的な自由として解釈することによって、前曲「Driver’s High」の自己の投げやりな感情を、”鈍感なその笑顔の下の罪”に重ねることができる。
しかし、結局はその自責の念から次の曲の主題である過去へと逃避してしまう。
四曲目「TIME SLIP」。
本プレイリストの流れとしては、ここで車を停めることになるだろう。
“時間旅行”という言葉の下に、過去の自分である”君”と現在の自分が対峙するという解釈にした。
“知らぬ間に”過ぎ去った時間軸に存在する”君”と今の自分では、同じバイブレーションを共有することはできないが、それでも同じ”明日”へ向かって”ささやかな夢を僕らは辿ってゆく”という結論に達する。
とてもノスタルジックな一曲で、聴く度に郷愁に駆られる。
五曲目「bravery」。
似た雰囲気を持つ前曲「TIME SLIP」の解釈構造を引き継いで、本曲では”あなた”を未来の自分として捉える。
“見てきたように何でも言う”未来の自分としての”一途な君”に対して素直になれず、”消えないキズ”を主張する。
結末としては、”あなた”が真実という名の痛みを理解しようとする勇気を持つことを信じ、それに連動して”we”(過去の自分と現在の自分)は”you”(未来の自分たち)と互いを高めていくことができるという理想を掲げる。
六曲目「the silver shining」。
太陽光線の降り注ぐ夏の午後のひと時に、涼しい部屋の中で聴きたい一曲。
“in the moon”に象徴される慣れ親しんだ静かな世界、そして、”in the sun”に象徴される峻厳な喧騒の世界という対象的かつ表裏一体の二択から、最後には自分にとって未知なる太陽の下での行動を選択するという解釈。
そして、この”sail the sea I’ve never gone”(未だ見ぬ海への航海)は、三曲目「Perfect Blue」の“遠く逃げよう 南の島まで逃げよう”から繋がっている。
七曲目「STAY AWAY」。
そして世界観が一気に変わり、その航海は本曲冒頭の“抜け出した大地”へと繋がる。
そこは、“レールの上に沿って”辿り着く“焼き増しの世界”では決してない。
しかしながら、“絡みつく世界”の煩わしさもない”無法状態”の中で、”浮かぶ雲”のような孤独を手にしたところで曲は終わる。
八曲目「a silent letter」。
更に世界観が一変し、静かな海底から”指先にはもう届かない””夜空”を見上げているイメージが映し出される。
破壊的な自由がもたらしたものは、”迷子になった幼い時のよう”な寂しさだった。
この余りにも静寂な曲調が、前曲「STAY AWAY」との間に緩急をもたらすことで、プレイリスト全体を引き締めている。
九曲目「What is love」。
物語は前曲「a silent letter」の”夜空”から少し遡り、郷愁的な“染められた空の赤”へと誘(いざな)われる。
ここでの解釈としての”君”は、歌詞には出てこない太陽を隠喩しており、主人公である”僕”は、二度と会うことのできない対象を太陽に投影している。
そして、”執拗に僕を追いやって”、”宛てのない足跡を残したまま”海の底へと沈没していく。
であるからして最後は、”あとはただ星だけが揺らめいていた”となり、前曲「a silent letter」へ戻る。
十曲目「Dearest Love」。
ラストソングは、壮大なバラードでオーソドックスに締めくくることにした。
“崩れてしまうのが余りに早すぎて何一つ変わらない”は、短い夏をテーマとする本プレイリストの象徴的な一節となる。
“信じるほど””離れてゆく””貴方”は、未来や理想を象徴している。
それは、人はあらゆる精神的な成長過程を経験することで理想を目指すが、現在という永続的で絶対的な視点において、未来は未来という幻想でしかなく、その距離を縮めることはできないという虚しさを表している。
曲の中間地点には泣きのバイオリンソロが、そして、ラストはドラマティックなギターソロを従えてフェードアウトしていく。
以上。
季節感を重視した結果、ほとんどがアルバム「ark」「REAL」からの選曲となったが、その分まとまりのあるプレイリストになっているかと思う。
ということで、今回のプレイリストも再生終了とする。
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著/臣咲貴王