「王の鼻舌」第十八回。
サイズの大きな葉巻のデメリットとして、吸うのに時間がかかるということが挙げられる。
また、時間がかかるということは、それだけ長い時間ニコチンを摂取し続けるということになり、ニコチン酔いのリスクが高まるということにもなる。
過去の記事でも触れているが、ニコチン酔いは現世の悪夢である。
これは、私のような車酔い弱者にしかわからないと思うが、ニコチン酔いに襲われると、車酔いをしたときの気分に酷似したダウナーの極み、すなわちこの世の終わりを超越した倦怠感と不快感を味わうことになってしまうのである。
よって、ニコチン酔いの初動を感じた場合には、たとえ火を灯したその葉巻がどんなに高価な一品であろうと即座に投了することが重要となる。
「損切り」とでも呼ぶのが相応しいだろうか。
この損切りのタイミングに躊躇していつまでも紫煙を香り続けていると、心身共に深刻なダメージが負いかねないのだ。
私もこれまでに何度かニコチン酔いに打ちのめされた経験があり、刻み込まれたその恐怖の影響で、長く太いシガーを吸うときには少々構えてしまう。
リラックスしてIQを高めるために吸っている葉巻が、ニコチン酔いの導入剤になってしまったのでは本末転倒なのだ。
以上、前置きとなる。
今回は、この前購入したハバナシガー群の中から「BOLIVAR ROYAL CORONAS | ボリバー ロイヤル コロナス」を吸おうと思った。
しかしながら、これが巨大サイズ。
ニコチン酔いのキーワードが脳裏をよぎり、考察の末に秘技を使うことにした。
トルセドールへの冒涜、葉巻の切断である。
12.5センチメートルの内、約4センチメートル分をシガーカッターで切断。
およそ三分の一。
これでだいだい640円分となるだろうか。
吸い口にマスキングテープを巻き、ラッパーが解ける事態を防止している。
実にひもじき装いである。
尚、本記事は二部構成となる。
前半ではこちらの三分の一を吸い、残りの三分の二は後半でレビューする。
前半戦はプレスモーキング、言わば前座試合となる。
ラッパーの香りは、ハーブ系の清涼感の要素が主として感じられる。
では、着火。
可もなく不可もなしといったところだろうか。
期待とは裏腹の喫味である。
同じ銘柄の「BOLIVAR PETIT CORONAS | ボリバー ペティ コロナス」とは少々毛色が違い、荒くれた印象だ。
煙は柔らかく黄味がかった印象で、粘り気のニュアンスがある。
色で例えるとブラウンオーク。
しばらく吸っていると、湿り気のある旨みが出てくる。
短くしただけあってドロー(吸い込み)はかなり良い。
ストローレベル。
喫煙開始から40分弱で、持ち手の1センチ強を残して投了。
途中で喫味の変化もあったが、これといった素晴らしい香りには出会わなかった。
プレスモーキングで期待が外れ、少々憂いてしまったが、この二週間後に敢行した本戦の様子が以下となる。
着火。
立ち上がりの印象は、プレスモーキングの時と同じく土にまみれ荒ぶっている。
同じ個体なので想定の範囲内。
10分ほど吹かしていると、濃密さとコクが徐々に安定してくる。
フットから上昇する紫煙のほろ苦い甘さが心地よく、ボリバーの真骨頂といったところなのだろうか。
好みかと言われるとそうではないにせよ、梅雨時の下落思考を慰める雄大な優しさが感じられる。
そして、次第に雨上がりのそよ風のような印象が混ざりはじめ、かなり良い具合に変化。
時折、豆乳ティーで喉を潤す。
幾多の苦難に燻(いぶ)された中小企業の社長のようなプレミアムシガーだ。
終盤、少々ニコチン酔いの兆しを感じたので、5センチメートルほどを残して泣く泣く損切りした。
喫煙時間約50分。
経験則から、好みの喫味から遠い葉巻に対してニコチン酔いをする傾向が強い。
今後のシガーライフにおいては、あらゆるコストの観点からも、「MONTECRISTO MEDIA CORONAS | モンテクリスト メディア コロナス」などのようなミディアムサイズの葉巻を中心に愉しんでいくのがスマートであるとの結論に達した。
ボリバー ロイヤルコロナスは、そのきっかけをくれるプレミアムシガーとなった。
最後に、ロイヤルコロナスは楽天市場では購入できないので、同等の喫味を持っているであろう「ボリバー コロナスジュニア」へのリンクを貼っておく。
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著/臣咲貴王