昨年末に完成した、フルオーダーで制作を承っていたプラチナ製ベビーリングの内容報告。
ベビーリングとは、子供が生まれた際に、赤ちゃんのためのファーストジュエリーとして、誕生したばかりの新生児の指のサイズに合わせた指輪を贈る習慣であり、ヨーロッパが起源とされている文化である。
当ブランドのコンセプトとしては、このような慣習的文化には関心が薄いと連想されがちではあるが、光と影のような二面性に焦点を当て統合を目指すxCROWxNILxTAILxCOCKxにとっては、あらゆる認識が制作活動の対象となり、意欲としてのタブーは存在しないと断言できるだろう。
現世に新たなる生命が誕生するという大いなるイベントに関わる使命を受けたということで、つまりは、真摯な魂で制作に臨んだのである。
リングデザインは、フェザー(羽根)を一点モチーフとし、仕様はプラチナ(Pt900)。
センターストーンには、ピンクトパーズを石留めすることとなった。
ちなみに、トパーズは11月の誕生石である。
ロストワックスの技術による創造なので、メインで時間を費やす作業はインジェクションワックスを使用した造形となった。
ベビーリングは、新生児のリングサイズに合わせて作る指輪であるからして、通常のリングより格段に小さなものとなる。
そういった面で、細部彫刻の際の羽の流れなどは気を使った点だろうか。
完成したワックス原型。
ワックス原型をプラチナに鋳造後は、研磨作業に移る。
そして、最後にピンクトパーズの石留めを施し、フェザーベビーリングの完成となった。
子供が誕生したアニバーサリーとしての性格を持つベビーリングなので、裏抜きをするなどしてマテリアルを少しでも節約しようとする業界的且つ不届き千万な真似はしていない。
Pt900総重量は約7グラム。
そして、先方のご要望で、ネックレスとしても着用できるように、同じくプラチナでチェーンもご用意。
こちらの三つ編みタイプのプラチナチェーンは、マシンメイドの既製品にC環とダルマをろう付け(鑞接)によって取り付けたもの。
チェーンのマテリアルはPt850とした。
更に今回は、ご希望に沿ったガラスケースも付属させている。
こちらは、株式会社メイクワンに依頼し、製作していただいたもの。
蓋の天面にルーペ機能が付いており、観察者側から、収納してあるリングの拡大像が見える仕様となっている。
そして、オプション加工で、こちらでデザインしたフォントを使用し、お名前と誕生年月日のテキストをサンドブラストによって彫刻してもらい、ラッカー仕上げで金色の色入れも施していただいた。
フルオーダーによる作品制作は、言わば一度きりの勝負であり、同じ作品を創ることは二度とできない。
これは、ブランド運営としての商品制作が、マスターピースとして創造した作品原型のゴム型をとったものから生まれる量産品となってしまう事実とは、性格を異とする仕事である。
そのような機会が、自己の体験に結びつく理由の奈何に関わらず、その貴重な経験の中で培われる想念が更なる自己昇華の一因となることは間違いないだろう。
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著/臣咲貴王