私は、今冬において、暖房器具というものを一切使用せぬまま乗り切ろうという暴挙を敢行していたのだが、東京における最寒期を迎えるにあたり、その悲願達成の目標が、脆くも崩れ去ったことをここに報告しておく。
別に、将来山奥で仙人になるための予行演習をしていたわけではない。
暖房器具を使用せず冬を越したという経験を己に植え付けたいという渇望ゆえに、真冬に滝行を敢行する修行僧に近い心持ちで、私はこの越冬に挑んだのである。
西暦にして1986年、冬生まれの私は、今世のこれまでの人生において、冬といえば炬燵(こたつ)、ファンヒーター、電気毛布など、文明の利器に頼った怠惰な越冬を当然のものとして受け入れた生活を歩んできた。
しかし、ホモ・サピエンスの抵抗力とは果たしてその程度なのだろうか、という疑問符という名のレジスタンスが、ふと精神世界に浮上したのである。
ちなみに、私個人としては、炬燵を長年愛用していたのだが、部屋の美観においてどうにも違和感が拭えない事実にジレンマを抱えていた。
そこで、自然体のままで乗り切る冬も経験しておこうと、この愚行に至った次第だ。
まあ、暖房器具を使わないとはいえ、暮らしているのはもちろん室内且つ密室なので、吹きさらしの環境に比べれば大いなる防寒性を獲得しているといえるが、精神論で寒さに対処する自己の心象を内観することによって、今後の生き方に新たな進路を開拓することすら可能かもしれない。
その時は、そんな希望に満ちていた記憶がある。
そして昨年、2016年11月の季節外れの雪模様をやり過ごした辺りから、その根拠のない自信は、明らかな確信へと変貌を遂げていた。
だがしかし、師も走りを歩みに変えんとする12月も暮れのことだった。
ここ数年風邪などほぼ引かなかった私が、あろうことか風邪を拗らせてしまったのである。
そして、時期にしてクリスマス・イヴから年明けに及ぶ約10日間、風邪の症状は治まらなかった。
年末の過密なスケジュールによる疲労感と、寒さによる免疫力低下及び一種のストレスの産物としての鼻水の沼と、咳という名の悪魔からのメッセージに藻掻き苦しみながら、私は一つの誓いを立てた。
もはや暖房器具を買おう、と。
敗北の瞬間だ。
結局、ホモ・サピエンスにとっての最大の敵は、寒さであるに他ならない。
人体の皮膚構造を紐解いてみても、暑さを感じる「温点」より、寒さを感知する「冷点」の方が高密度で張り巡らされている事実から、ヒトは寒さに敏感な生き物であり、それほど寒さが人体にとって警戒すべき状況であるということを示しているのだ。
その基盤に、暖房器具がないという生活要因が加わることで、精神的なプレッシャーを誘発し、免疫に更なる悪影響を飾ったことが今回の悲劇に繋がったのだと分析している。
そんな言い訳を遺し、来る2017年1月、とうとう観念した私は、部屋の美観を損なわぬようデザイン性の高いアラジンのパネルヒーターを新たに購入した次第。
アラジン パネルヒーター ブラック AJ-P100AK
価格:16360円(税込、送料別) (2017/1/14時点)
パネルヒーターは、遠赤外線効果による発熱を特徴とする暖房器具であり、温風を出すことがないので、生活領域の空気を汚さずに済む。
また、狭い空間であれば、全体を優しく仄かに暖めることが可能な紳士的暖房器具である。
一酸化炭素中毒の心配もないので、気密性の高いマンションの部屋などにも最適であり、エアコンディショナーのように空気を乾燥させる恐れも最小限度に抑えられる点で高く評価できる。
ちなみに、上記のアラジンパネルヒーターは、500W(ワット)と1000Wの消費電力切り替えが可能で、1h(時間)、2h、3hの切タイマー機能を有している。
背面デザインも無駄がなく、場所をとらないパネル形態であることは秀逸なメリットであるだろう。
暖かいということ、ただそれだけで幸福感を得ることができると再確認できたことが、今回私が身をもって果敢に敢行した人体実験の残した成果ではなかろうか。
自然回帰を求めんとす私の野望は朽ちたわけではないが、今回の失敗に学び、来たるべき叡智覚醒の未来を思い描きながら、今はまだパネルヒーターの恩恵を享受するとしよう。
以下はブログランキング。
著/臣咲貴王