シルバーアクセサリー制作、いわゆる彫金を実施するにあたって、基本となる必要性の高い彫金工具の一つとして「スリ板」というものがある。
工具というよりは道具といった方がニュアンスは近いが、まぁ彫金アイテムの一つである。
スリ板は、糸ノコによる貴金属の切削作業や、ヤスリがけ、研磨などの際に、手元を安定させ作業効率を良くするための台のようなもので、語源はおそらく摩擦することを意味する「摺る(する)」から派生して、「すり板」と呼ばれるようになったのだと推測できる。
…簡潔に表現するとただの木の板なのだが、これを自分にとって好都合な形状に切り出して使うのだ。
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通常は、作業机に取り付けた「カスガイ」と呼ばれる部品にスリ板を固定して使用する。
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私もこの基本的なスリ板をもう十年以上使用していたのだが、作業環境のデザイン性に疑問が生じたため、当ブランドxCROWxNILxTAILxCOCKx仕様のオリジナルなスリ板を作ることにしたのだ。
まずは、木材を調達すべく東急ハンズ渋谷店へ。
そして、シンクロニシティのなせる技で、スリ板に適切であろう木材を発見したのだ。
左手に見えている悪魔的色彩の木材が今回主役となるカメルーンエボニーという木材で、二本で¥7,000弱という仕打ち。
木材コーナーで数十分躊躇いに暮れた末に入手した。
ちなみに右半分の紫色の木材はパープルハート。
パープルハートは結局、今回の作業では使用しなかったので視界から割愛していただきたい。
とりあえず、これを思い描く形状に削り出してゆくのであるが…
漆黒に佇むこのカメルーンエボニー。
名のとおりカメルーンが原産地で、非常に重厚で加工が困難な木材である様子で、手にした感触もその密度の高さを感じずにはいられない代物である。
よって、削り出し作業は困難を極めた。
暗黒の粉塵に空間を支配されながらも諦めず奮闘すること数時間…
スリ板の母体が完成。
この二本を実際に組むと以下の様相になる。
カメルーンエボニーの漆黒と十字を切るシルエットデザインの相乗効果が悪魔的な印象を演出しているではないか。
ちなみに、メイン板の固定材として使用している角柱のカメルーンエボニーにはいくつかの穴が空いていて、この穴に研磨作業に使うリューターというマシンの先端工具をセットできるようにしてある。
まさに、機能性とデザインの融合。
クロスのスリ板は前々からイメージしていて、今回偶然にも適任であるカメルーンエボニーという木材と巡り逢ったことで実現に至った。
この十字を切るスリ板も前任のオーソドックスなスリ板に負けぬよう、十年、二十年と新たなパートナーとしてこき使い続けたいと思う。
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著/臣咲貴王