彫金机を新調したことにより、作業効率の上昇を実感する春の頃。
人生の豊かさは思考テリトリーの広さに比例し、物質的な豊かさはその精神領域を源泉として反映されている副産物である。
日々堆積していく膨大な外的情報に惑わされがちな我々は、資本主義に誘惑された生理的欲求の姿そのものであり、アウトプットの自由を知らぬマリオネットなのだ。
これを逆さに捉えると、日常におけるあらゆる行為において、それが他人の意見ではなく自らの思考から導き出された行為である範囲が大きくなればなるほど、人生を思い通りに支配することができるようになるという理論が成り立つ。
私は、その理論を元に己の意志で人生を構築すべく、日常生活からブランドでの作品制作に至るまでの領域において、できるだけ多く自己のアイデアを埋め込むことを意識している。
創造力は机上に宿る。
今回は、作品制作における上記理論の実践としての作業場の環境づくりについて、アイデアを3つほど紹介しておく。
まず、以前紹介したリューターカウルがそのアイデアの一つだ。
綿棒が入っていたプラスチックケースを利用して作られたこのカウルは、研磨作業時における粉塵の空気中への飛散を防御するドームの働きをするカバーである。
リューターの先端に取り付けるだけなので、集塵機のように無駄に場所をとることもなく、ローコストで最低限のパフォーマンスを発揮してくれている。
また、先端に輪ゴムを巻き付けることでカウルを固定し、作業中にカウルがリューターから脱落する煩わしき事態を未然に防いでおり、これによって作業の快適度を高めている。
二つ目は、上記同様に貴金属の研磨作業やワックスの切削作業の際に床に落下する粉塵の収集問題への対処術。
まあ、粉塵を受けるためのごみ袋を設置したということに過ぎないのだが、ここにもオリジナルの合理的アイデアを垣間見ることができる。
袋の設置には、作業のメインテリトリーである悪魔的スリ板を固定するためのカスガイのネジ穴を利用する。
まず、このカスガイの留め具の上から金属製のL字プレートをネジ留めする。
このL字プレートは、以前別の目的のためにTOKYU HANDSで購入した品で、運命的にカスガイのネジ穴と同じサイズの穴が空いていたので利用した。
プレートはカスガイの左右両方に留め、その両端に輪ゴムを通す。
要はこの輪ゴムの張力を利用してビニール袋を挟むことによって、簡易的な粉塵の受け皿を完成させるのだ。
これにより、直下にごみ箱などを置くよりもコンパクト且つ柔軟な対処が可能となる。
リューターカウルとの合わせ技で、偉業と呼ぶべき大いなる働きをしてくれている。
そして三つ目、最後のアイデアは光源。
例えば造形作業において、より精細な領域へと踏み込む場合、部屋の電灯と肉眼だけではいまいち作業性に欠けるものがある。
普通ならばデスクライトを設置したいところだが、大がかりな道具が増えて作業環境の整然さを失う状態を回避したい私個人としては考えどころだ。
準備したのは以下のフレキシブルアーム付きルーペと掌サイズのコンパクトライト。
ちなみに、こちらのルーペは電球付きのものだが、少々明るさに欠けるのでコンパクトライトで強化することとなった。
フレキシブルアームはクリップ式のものだったが、このネジで留めてあったクリップ部分を排除。
そして、アームを先程のL字プレートにネジ留めし、ルーペ部分には台座を分解したコンパクトライトを両面テープで貼り付ける。
すると、デザイン性の面でも決して悪くない佇まいの光源付き拡大鏡が姿を現した。
尚、このライティング機能とズーム機能のハイブリッドなツールによって、現在進行中の新作における精巧な造形のクリエイションが実現されている途中だ。
以上。
これらの創造的環境づくりによって、今後の作業場がより高い次元で当ブランドの世界観を向上させていくに違いないという確信をもって、今回の纏めとさせていただく。
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著/臣咲貴王