2020年に販売終了となった宇宙一のスカルリング「GEBURAH(ゲブラー)」。
あれ以降も、最終在庫として残っていた1点を現在までデザインフェスタでのみ販売していたのだが、先日、その個体がお客様からの直接のご注文によって完売となった。
そして後日、巡り巡ってそのGEBURAHのサイズ直しの依頼を受けたのだが、これが想定外に難航してしまった。
依頼内容
ご依頼は、17号から23号へのリサイズ。
200グラムを超える銀塊である当該スカルリングをここまで大きくサイズ変更することは、制作者としては受難の極みである。
そして事実、それは想像を悠に超える所業であったのだ。
手術開始
通常のリングサイズ直しにおいて、サイズを大きくする場合には、リングの一部分を切断してその切れ目を拡張し、開いた空間に新たな地金を嵌め込んでロウ付けをするというのがスタンダードである。
よって何はともあれ、GEBURAHにおいてもまずは糸鋸(いとのこ)でリングを開腹する。
そして、外科医気取りのまま拡張作業へと移るのだが、生まれながらに頑丈過ぎたGEBURAH。
木槌(きづち)で打てども打てども23号に届かないのである。
焼き鈍し(なまし)ては叩き、また焼き鈍しては叩き…。
終いに取り出したる金槌をもってしても23号には届かない始末。
暗雲と挫折
根気を尽くせど、スタンダードな作業工程では到底成し遂げられる所業ではないと悟る。
投げ出したくとも、私には生みの親としての責任があり、やむなく依頼主には作業期間延長願いを送信し、帝王切開さながらの別の手段を探ることとなった。
導き出した術式
そして私が導き出した方法論は、リング内側に更に2箇所の切れ込みを入れて拡張を促すというもの。
切り込む深さによっては、後のリング自体の耐久性に影響が出かねないため、慎重に慎重を重ねる。
このアイディアは上手く機能し、なんとか23号に相当するサイズまで到達させることができた。
そこまで来れば、後は拡張部の空間と2箇所の切れ込み部分に合わせたシルバー925素材を嵌め込んでロウ付けをするだけ。
GEBURAHの退廃的なオーラに見合うように、歪なままの空間形状に合わせた素材を制作した。
そして研磨、仕上げ作業を経て完成。
血と苦悩の完成品
実物リングの構造上、どうしても真円に成形することが出来ず、やや楕円形状の仕上がりとなっている。
サイズ棒での計測上は21号であるが、着用感は23号に相当する。
責務は果たした。
宇宙一を超える構想
ここまでの重量の指輪は世にはそうそう存在せず、ニッチな需要においてもう二度と手に入らない当該リングの希少性は、今後高止まりとなるわけだが、私の脳の引き出しにはまだ構想がしたためられている。
GEBURAHを凌ぐスカルリングの構想が。
過去の己を超越する怪物の朧げな姿、それを具現化することだけが私が私に与えた私の生きる意義なのだ。
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著/臣咲貴王