七大使命解説「第四章 -真実のインプット-」

xCROWxNILxTAILxCOCKx for DEVIL 七大使命 「真実のインプット」

「xCROWxNILxTAILxCOCKxは、硫化銀を介して真なる情報を内的世界へとインプットすることを使命とする。」(xCROWxNILxTAILxCOCKx for DEVIL 七大使命より)

 

七大使命解説第四回。

今回は、前回の第三章「叡智のアウトプット」の解説に続き、第四章「真実のインプット」について解説していく。

 

本章では、当ブランドが作品制作に使用するマテリアルの半面を担うシルバー(硫化銀)の機能について述べている。

 

以下、第四章全文の引用。(2018年4月時点)

“同じく当ブランドの物質的領域におけるもう半分を担う重要な貴金属としてのシルバー(硫化銀)については、果たしてどのような機能が任されているのだろうか。

シルバーは、ゴールドには劣るものの、地球上に存在するマテリアルの中でも稀少な貴金属である。

また、一時代においてはゴールドよりも高価で取引されていたこともある重要な貴金属であり、ゴールドと同じく時代を越えて、更には国境をも越えてその価値を共有することのできるマテリアルの一つである。

占星術などにおいて、美しい白銀色を放つシルバーの象徴は「月」であり、太陽光を浴びて輝く月の性質と同じく、当ブランドの世界観の核を担うゴールドとシルバーについても、切っても切り離せない密接な関係性が成り立つ。

相反する概念を融合させることによって生まれる完全な芸術的資産の創造を目的とするxCROWxNILxTAILxCOCKxにおいて、太陽の象徴であるゴールドに対応する要素として、シルバーの使用は絶対条件であると言えるだろう。

xCROWxNILxTAILxCOCKx for DEVILにおける硫化銀は、物質的パートナーであるゴールドが有効に働くための準備段階においてその重要な責務を果たすこととなる。

ゴールドの章で説明した、硫化銀が光エネルギーを集めるという機能である。

燻し液が齎すケミストリー(化学反応)よって硫化銀となったシルバーは、色彩学において全ての色(光)を吸収する黒色の性質を獲得する。

この単純工程による影響こそが、当ブランドにおいてシルバーが発揮するアビリティであり、一言で言うと、物質世界の構成要素である光を吸収、保持する「光の保存容器」の役割を持っているのである。

例えば、最善に研磨された銀は、光反射率において他の金属の追随を許さない。

鏡面に磨き上げられたシルバーは、空間に散りばめられた全ての光を反射させる性格を示し、転じて魔除け効果を齎すともされている。

しかし、それに異を唱える態度で黒く燻された硫化銀は、逆に空間に充満する全ての光を吸収する性質を獲得し、結果的に、禍々しいエネルギーを含む全ての光、つまり、物質的世界を認識するための重大な手がかりである視覚情報をあるがままに捕獲することとなるのである。

銀本来の熱伝導率の高さに、光を吸収する暗色の要素が融合することによって得られるこの働きは、言い換えると「魔寄せ」とも形容できるかもしれない。

では、このようにある種無差別に蓄えられた混沌とした光エネルギーが、どのような形で我々にとって有益な要素として咀嚼されるのかというと、そこで登場するのが金、ゴールドの機能なのである。

当ブランドが出した答えである銀という貴金属マテリアルの恩恵に対する冒涜ともとれる全表面の燻し工程。

これは、ある意味これまでに築き上げられてきた人類の負の歴史や形式ばった固定観念から脱却しようとする意志を表明するものでもある。

そして、善悪の全てを受け入れる度量を備えた硫化銀は、xCROWxNILxTAILxCOCKxの信念を体現するに相応しい器であると言えるだろう。”

以上、公式ウェブサイトより引用。

 

「退廃的硫化銀」としての当ブランドのシルバーが、黒化した色彩学上の器として真実という名の光情報を残すことなくインプットすることで、ゴールドの機能によって洗練された形でアウトプットする為の御膳立ての役割を果たすこととなる。

 

これは、日本のジュエリー業界を客観視して思うことなのだが、日本人は製品の最終仕上げに関して、磨き残しの僅かな傷があるだのといったミクロな要素を過大に重視する傾向がある。

金属面に曇りが残っているだとか、ルーペで眺めて小さな傷でも発見しようものなら、彼らはこの世の終わりがごとき心境で磨き直しにかかるのである。

また、他社製品の仕上げを見て小さな粗の発掘に成功すると、鬼の首を取ったかのごとく狂喜乱舞するその醜悪な姿は見るに堪えない。

明らかに目立つ傷などは別だが、肉眼では見えないような傷があろうとなかろうと、製品の売れ行きに明確な違いなど現れない。

デザインが全く好みでない商品を、「仕上げが綺麗だから買おう。」などという人間は万に一人も存在し得ないのだから。

 

ミクロな不安要素に対して必要以上にネガティブな反応を示すこの体質は、日本人特有の文化であると感じ、その愚かさはシルバー製品に対する接し方に如実に表れていると思う。

まず、銀という金属は、空気中の硫化水素と化学反応を起こすことによって「硫化」する性質がある。

要するに時間経過と共に黒ずんでいく宿命にあるのだ。

よって、シルバーをいくら曇りなく完全な鏡面に磨き上げたとしても、任務完了の瞬間から硫化は始まっているのであり、空気中で数ヶ月も経てばその労力は水泡に帰すだろう。

この残酷な銀の性質と日本人的な気遣いの文化が融合することによって、日本のジュエリー産業は不滅のジレンマを創造してしまったのだ。

 

「ならばはじめから黒ければいい。」

業界に対するそのようなささやかな反抗心から、for DEVILにおける全面に燻しを施したシルバーのアイデアは生まれた。

光エネルギー吸収の上記理論は、その反骨精神の副産物であるに過ぎない。

しかしながら、「シルバーの経年経過に対する不安」と「製品としての完成度を保ちたい」という矛盾した二つの袋を梱包するためのより大きな袋が、「シルバーを意図的に硫化させる」という行為なのであり、道理に適ったこの行為が筋の通った理論を内包するのは必然であるといえるだろう。

 

そして、そこへゴールドの価値と機能を融合させることによって、ブランドとしての独自性を更に高めたものが、for DEVILが謳う圧倒的イデオロギーの正体なのである。

 

尚、本章は以下の過去記事の完全版に位置付けられる。

 

ということで、第四章に関する補足はここまで。

次回は、第三章、第四章に亘って解説してきた金と銀を組み合わせることによって生み出される作品群について述べた第五章「作品の流通」について解説する。

 

公式ウェブサイトはこちら。

xCROWxNILxTAILxCOCKx for DEVIL公式ウェブサイト

 

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著/臣咲貴王



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